2014年冬のうち2週間を、オレゴン州ポートランドで過ごしました。
ポートランドは、全米一"街のビール屋さん"が多い街。
過ごした目的は「ポートランドの住民になって、クラフトビールのある生活を暮らしてみる」でした。
けれど今回はビールの話ではありません。
暮らしの中、近所のそこかしこで Farmer's Market という市が頻繁に開催されていました。
Urban Growth Boundary (都市成長限界線) が法律で決められていて、これより外側は開発してはいけないそうです。
それで農業が守られていました。
その外側から農家さんみずから売りに来るのがマーケットです。
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高円寺麦酒工房を営むなかで自然と地産地消に関心が深まりました。まずは最も近い地元・杉並の野菜を求めました。しかし杉並野菜は収穫量がたいへん少なく、ほとんど流通しません。晴れたら畑の前の小屋にときどき野菜が並んだと思ったら、どこからともなく住民がわぁっと集まってきて、あっという間に売り切れてしまう。農協の直売所ならある程度は揃いますが、そこも住民の方々が行列してやっと買うような感じです。私が行って買えなくはないですけども、お店で必要な量はかなりになるので、全部買い占めるようなことになってしまう。それは良くないような気がして、杉並の次に近い生産地を探し始めました。
練馬区は杉並区より豊かですが、それでも店用に仕入れるには足りません。
武蔵野市、三鷹市もそう。西東京市。東久留米市、東村山市、とだんだん西へ遠のいていきます。
そんなふうに野菜調達で悩んでいたとき、義父が教えてくれたのが、狭山の堀兼という地域でした。車で行ってみると辺り一面見渡す畑、畑・・。
訊くと市場にもどんどん出荷しているそうです。
これなら大丈夫!うちの4つのビール工房の分なんて全く問題なさそうです。
しかしひとつ気になったのが、杉並区民や中野区民が、狭山の野菜をいただくことが地産地消と呼べるのだろうか・・。
そこにポートランドを想い出しました。
Urban Growth Boundary。検索して地図を見つけ、当時滞在した家から境界線までの距離を測ると、だいたい7〜12マイル(≒11〜20km)だった。これより外側に農地があって、農家さんが売りに来ていたんだーー。
この距離は、農家さんが、朝収穫した野菜を、自らマーケットへ売りに来て、日帰りで帰る、のに無理のない距離なのだそうです。
またダウンタウン(中心地)に住む人々が、土を求めて行ける距離なのだそうです。
ポートランドに移住する人の中には、サンフランシスコやロサンゼルスなど巨大都市からも多いそう。
そこになにか人が人として幸せに暮らすのに調度良い規模というもののひとつの答えがあるんだと感じました。
振り返って東京に重ねると、20kmどころではない、どこまで行っても関東一円すみずみまで開発されています。
しかしポートランドと同じくらいの距離感に東京でも産地があるなら、ポートランドに習えば、地産地消なんです。杉並区から半径20kmの円を描いてみました。するとなんと!堀兼が重なったのです。
ポートランドから教わったこと。
都市に住む人々にとって、地産地消とは何か。LOCAL食材とは何か。
私達にとってのLOCAL食材としてーー。胸を張って狭山野菜を産直で仕入れ始めました。
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この話には続きがあって、
いま「所沢野菜」も仕入開拓中です。
というのは2016年初に新宿区へ出店したことで、消費地と生産地の距離が、少し遠ざかってしまったのです。まぁ、どうしても20km以内でなきゃ絶対ダメというような事ではないですけど、心に引っかかっていました。そうしたら同年末に所沢市へ出店したのを機に、所沢の農家さんと知り合うようになりました。所沢は狭山より東京に近いんです。所沢市にも古くは江戸時代から開墾された「三富(さんとめ)」ほか豊かな農地が広がっていたのですーー。
これからも、所沢狭山を中心に、素敵な農家さん、豊かな産地から、旬で美味しい野菜を、それに合った調理方法で、皆さんにお届けできるよう頑張っていきます。
ありがとうございます。
▼さんとめについて
▼写真はポートランドで立ち寄ったマーケットより
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